『見る美 聞く美 思う美』 節子・クロソフスカ・ド・ローラ著 詳伝社


生き方にとても惹かれます

人の考え方や感じ方は変化していくもので、その時々によって好む本が違ってきます。随筆はもしかすると、それが最も現れているかもしれません。現在スイスにお住まいの節子・クロソフスカ・ド・ローラさんにはとても惹かれるものがあるのです。

この方を知ったのは、恐らくどこかの雑誌だったかもしれませんが、定期的に目にするようになったのは、朝日新聞で毎月届く『暮らしの風』という小冊子のエッセーからでした。いつも素敵な暮らし方だなあ、と思って楽しみに読み、途中からあまりにも美しいので、彼女のエッセイだけ切り抜いてファイルすることにしています。

 この度初のエッセイ集が出るというので、早速手にしたところ、期待以上に素晴らしく、大変感動致しました。日本を離れて海外生活をしているにも関わらず、日本の美しいものをこよなく愛し、大切に抱きしめて、それを自然と身につけていらっしゃる、その凛とした姿勢に思わず、畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。それと共に、この本を読んで、彼女は私の理想とする一つの女性像ともなりました。

全編を通して最も感動するのは、節子さんの心の美しさとそれを支えている芯の強さです。彼女の言葉は力強く真っ直ぐで、限りなく正直であり、それ故に一層心に直接響いてくる気がします。また感性の豊かさから、描写も美しく、優雅でうっとりした気分にもさせてくれます。最後の方に、長男の死と夫である画家バルテュスとの別れについて書かれたものがありますが、読む内に悲しみというよりはその関わり方の美しさに心打たれて、思わず涙が溢れてきました。

私は毎晩彼女の本を少しずつ読むのがとても楽しみでしたが、あっという間に読み終わってしまいました。そして着物に対する淡い憧れが芽生えてきたようにも思えます。

この本には私たち日本人がかつて持っていた美しいものがぎっしり詰まっていると思います。この本を読んで、私は日本人であることを誇らしく思い、またそうした日本人が本来兼ね備えていた美徳を取り戻りたいとも強く思いました。今日失われてしまったものの価値を見直す時代はすでに来ているのではないでしょうか。

Posted: Tue - November 16, 2004 at 09:03 PM      


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