I, Robot by Isaac Asimov


今読んでも驚きと感動がある。映画との関係は?

随分前に映画「アイロボット」を観て、とても刺激され面白かったので、やはり原作を読まねばと思い買ってみたら短編小説集であり、映画とは相当違った内容になっていた。読み易すぎるくらいにすらすら読めるし、短いのであっという間に読み終わった。主に6つのほぼ独立した短編から成り立っているのだが、どれもなかなか深く唸らせる内容となっている。

人間以上の知能を持ったロボットが登場してくるが、どれも人間側からすれば、クレイジーなロボットばかり。一見まるでコメディーであるかのように、面白く展開していくのだが、随所にぎょっとさせられる突き刺さるようなメッセージが織り込まれており、それこそが巨人作家アシモフからの伝言なのである。そういう箇所に当たると、やはり普通の作家とは違う、と感心してしまうのである。

特に私がぎょっと考えさせられた短編は"Reason"である。Cutieというはるかに人間をしのいだ非常に高い知能を持ったロボットが登場する。彼は自分を創造したのが誰か、知りたがる。そして人間が作ったのだという説明には一切納得できず、よって命令にも従おうとしない。そして彼はついにConverterが唯一のMasterであるとして、人間の言うことには一切従わなくなるのである。Cutieには彼の世界観があるのだ。

 読んでいくうちに、果たしてこのロボットと人間の違いはなんなのだろうと考えさせられる。自分の存在について問いかける、つまり哲学するロボットであるCutie。ところが展開するに従って、このCutieのほうが人間の理解をはるかに超えた領域へ到達しているのではないかということを示唆するような発言が出てくるのである。そして他のロボット達が口を揃えて言う。"There is only one Master, and Cutie is his messenger."

単にこれらのロボットをクレイジーとして読むのか、それとも人間を超えた所に行ってしまっているのか、読者の判断に委ねられている。

ちなみに映画ではこの短編の他、"Little Lost Robot"のエッセンスが取り入れられているようだ。なるほど映画もアシモフのエッセンスを上手く取り入れたかなりの秀作だと思った。






Posted: Fri - January 21, 2005 at 07:50 PM      


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