『草迷宮』泉鏡花 ー鏡花の言語を読む


まさに迷宮そのもの、圧巻

先日、玉三郎の鏡花特集を観て、鏡花にもっと親しもうと思い、
大昔に途中で挫折した『草迷宮』に挑戦することにした。

やはり前半は大変苦戦をした。。
慣れない昔言葉、意味の分からない単語、
地の文なのか、会話文なのか、なんども分からなくなる変幻自在構造。。
分からなくなる度に、何度も読み返してみる。
ネットで分からない単語は調べる。
これは鏡花の創造した「異言語」なのだと言い含めながら。。

ところが辛抱しながら読み進め、物語が後半に差しかかると、
ぐっと読むスピードが上がり、最後まで一気に読めた。
途中から読みやすくなったのか、それとも自分が慣れてきたのか。。

最後に至っては、鏡花独自の文体が織りなす、まるで絵巻物を観ているかのような
豪華絢爛たる万華鏡のような幻想世界に酔いしれる自分がいた。

凄い。。凄い迫力だった。
私は耽美な文章を元より好むのだけれども、
ここまで極めているのは、ちょっとないかもしれない。

感性の鋭さ、豊かさと美的センスの高さは画家や詩人のそれに匹敵する。

それにしても、一見、他を寄せつけないあの文章は
美しい異世界を垣間見るための、高い山であり
それを登ったものにだけ、それを味わう資格があるとでも言うかのようである。

世に鏡花の文章に中毒になる人がいると聞いたが
一度あの味を覚えてしまうと、もう離れられなくなってしまうのかもしれない。

内容については、地の文や語りが前後左右に自在に変わり
読者自身も迷宮に陥るのだが、主人公は魔物の住む屋敷の迷宮の中を彷徨い
人間界や魔物界、天界、夢、現と境界なく交差するそのめくるめくような
世界が展開する様は、まさしく迷宮そのものであると思った次第である。

Posted: Mon - August 7, 2006 at 03:52 PM      


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