NANA ★★★


人物設定の魅力を考察

1000円で映画が観れる日に、今時の女の子達が絶大な支持を寄せる漫画の映画化ということで
一体どのような凄いストーリーなのだろうと興味を持ち、
全く期待せずに観たのだが、これが意外と良かった。
ちなみに私は原作を全く読んでいない。

見終わった感想としては、(原作は知らないが映画では)
表面的には少なくとも、ごくごく普通のドラマだったということだ。
私は妙に安心したくらいである。特に変わったことは何も起こらない。
ごく普通の恋愛ドラマが繰り広げられているだけなのだが
これほど絶大な人気を誇る理由は、その表現の巧みさと抜群の人物設定にあると思った。

実を言うと、特に変わったことは何も起こらないのに、読者を惹きつけるというのは
かなり難しいことである。それに見事に成功していると言って良い。

まず、主人公の設定は黄金の鉄則と言ってもいい、正反対のキャラクターを持ってきた。
そして重要なのは、主人公のナナが寡黙でミステリアスな魅力に溢れているということだ。
これでまず観客は惹きつけられてしまう。
そして、非常に人なつっこい普通の女の子ハチは、読者と同化してナナを一緒に観察する媒体となる。
ここが上手いと思った。

ボーカルのナナだけでは、現実とのパイプが薄くなり読者は離れていってしまう。
そこにハチという普通の女の子を登場させ、まるで自分も不思議なナナという女の子と同居しているかのような
気持にさせてしまうお膳立てが上手く作られている。

ちょっと離れるが、これを観ていて私はふと竹宮恵子の名作『風と木の詩』を思い出した。
あそこまで過激ではないが、どこか似ているのである。
対照的な同性の主人公を対比的に登場させ、『風と木の詩』では、同性愛に発展した。

そこで、映画『NANA』を思い出してみよう。
二人のナナには同性愛的な要素はなかっただろうか。
私は十分にあったと思う。

ナナがハチの唇にキスをしたり、ハチが泣いてベッドで寝ていると、
ナナはハチのベッドに入って、抱きしめるというシーンがある。
しかもさらに、ハチはナナの話を聞いていて、胸がときめいた、などという
台詞まで吐かせているのである。

この二人は女同士の友情というよりはむしろ、ナナという男性の心を持った女性と
あくまでも女の子しているハチとの疑似恋愛関係と言った方がいい気がするのである。

原作ではどうなっているのか分からないのだが、映画ではとにかくスポットが当たっていたのは
ナナの恋愛ドラマであったと思う。もし友情がメインであるのならば、この二人は
けんかをしなくてはならないと私は考える。

二人の全く正反対の性格の女の子が一緒に住むというのは、並大抵のことではない。
二人が親しくなるのには、少なくとも何度かぶつかる必要がある。
だが、全くそういうシーンは出てこないのである。
とにかく良い面だけしか描写されていない。

ということから考えて、これは友情がテーマというには、かなり弱い。
だが、疑似恋愛という風に解釈するならば、また少し異なってくる。
しかも原作がまだ連載中で、あくまでも映画は原作の抽出だとすれば、
大目に見ても、仕方がないのかもしれない。

実際の所、私の唯一のストーリーとしての不満は、この全く性格の異なる女の子が
ぶつかることもなく、初めからすんなり仲良くなっているという所にある。

現実の女の子たちの人間関係をよく観察してみよう。
よく見ていると、女の子というものは、自分と似たような女の子同士とだけ
仲良くしているではないか。
少なくとも仲良くしているグループというのは
同じ雰囲気を持っていたり、見た感じもよく似ている。

こういう現実を踏まえたとき、NANAの設定が
実はあり得ないような設定だということが分かる。
実際の所、あり得ないような設定だからこそ
惹かれるというのはある。
がしかし、これがもっとリアリティーを
帯びるには、この二人が最初は違和感を覚えたり戸惑ったり、
時には激しくぶつかり合うというのが
どうしても必要となってくるはずだ。

映画は原作に忠実ということだから、その辺は
割愛しているのかもしれない。
好意的に解釈するならば、主人公のナナが非常に男性的で
しかも精神的に成熟しているのに対し、もう一人の主人公ハチ(あだ名)が
かなり子供っぽいという所から、
大人と子供のような関係が成立して、通常の友情関係とは異なったレベルの関係が
築かれていると見る。
これならば、対立の描写が割愛されても、ナナが非常に大人で許容範囲が
極めて広いということでかろうじて納得できるだろう。



最後に登場人物の魅力、特に異性から見た魅力的性格というもの
についてちょっと考えてみたい。

まるで死人のようなナナのルックスはさておいて、
両性の性格を持ち合わせたミステリアスな
ナナのキャラクターは非常に魅力的である。

実際、女性まるだしで大変分かりやすいハチは
同性には好かれているのだが、
非常に可愛らしいルックスであるにも関わらず、
彼氏にうるさく思われて、とうとうふられてしまう。

それに対して生気のまるでない、一見ちっとも可愛らしくないナナは
有名バンドのミュージシャンになった蓮の気持をいつまでも射止め続け、
さらにバンドのメンバーからも恋心を寄せられているのである。

これも私は黄金の法則(私が独断で考えているもの)の一つだと思う。
なぜなら、男性と女性、両方の性質を持っている人物は極めて魅力的になるからである。

深い話になるが、そもそも女性と男性という二つの性は、ひとつになるべくして
存在しているように思う。
この二つが完璧にバランスのとれた状態が究極のあるべき理想の姿であり、
それを他者に見いだした人間は、その人にすっかり魅せられてしまうのである。

実際私の周りでも極めて魅力的な人物というのは、
間違いなくこの両性の要素を上手く兼ね備えている。
しかも異性を惹きつけて止まないような、つまりモテるタイプの人というのは
間違いなく異性の興味を掻き立てるような、どこかミステリアスな雰囲気を持っている。

女性であれば、きめ細やかな気配りや優しさがあり、一見女らしく見えるのだが、
中身は男性以上に真が強く自分をしっかり持っている人。
しかも異性に対してはあくまでも神秘のベールに包まれているがごとく接する人ではないか。
こんな女性がいたら、男性はみな参ってしまうことだろう。

男性であれば、自信に満ちあふれて、一見男らしく堂々としているのだが、
内面は女性心理を理解できる、繊細な気配りが出来、
しかも母性本能をくすぐるようなタイプの人ではないか。
ヨン様のような??

このように異性をこの上なく魅了する人物というのは
こうした二面性を絶妙に持ち合わせているのである。

これは私の好みなのかもしれないが。。

考え出すと楽しくて止まらないが、
この辺で終わりにしたいと思う。

ここまで付き合って読んでくださって有り難う。


では、また。

















Posted: Fri - September 9, 2005 at 09:29 PM      


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