『イザベル・アジャーニの惑い』★★


ブノワ・ジャコ監督 イザベル・アジャーニ  スタニスラス・メラール主演 7/13鑑賞

『イザベル・アジャーニの惑い』は予告を観て、絶対に観ようと思っていた映画だ。今日ようやく観てきたが、『アデルの恋の物語』を観たことがある人は思い出さずにはいられないほど、主人公がよく似ている。いや似ているというより、そのまま年を経て同じ女性が別の映画の主人公になったという感じである。

 盲目的に恋するが故に、相手に厭われて、ついには身を滅ぼしてしまう悲劇的な女性をアジャーニが熱演している。アジャーニという女性はどうしてここまでこういった破滅的な主人公にのめり込むのだろう。きっと相通じるところがあるのかもしれない。そうでなければ、それほどまでにこだわらないはずだ。本人の思い入れは相当に強いものがある。

 それにしても映画では終始一貫して、なんといっても彼女の美しさが際だっている。年齢を重ねているのに、ちっとも老けていない。まるで少女アデルを演じた時と同じ表情なのである。もうすぐ50になるという女性とはとても信じられず、ある意味で驚異であり、同じ女性としてこのような艶めかしい姿のままで年を重ねられたらとやはり憧れてしまう。感動すると言ってもいい。なんだか映画の内容とは全く関係なく彼女の美しさによって、私も頑張るぞという気持ちになり元気づけられるのである。
 
さて映画の内容だが、はっきり言うと暗い。何もかも投げ捨てて惚れ込んだ男性にその真剣さ故に疎まれるようになり、最後には身を滅ぼしてしまうのだから。それにしても、どう考えてもこんな生き方では上手く行くはずがないと思ってしまう。大体何もしないで生きていられるはずもない。
 
彼女に束縛されることによって、自分を小さくしてしまったアドルフにしても、彼だけにすがるようにして生きようとするエレノールにしても、相手に頼りすぎて自分を見失い、それをいつも相手のせいにばかりしている。これでは不幸になるばかりに決まっているではないか。

 思うにアドルフが自分を殺してエレノールに合わせようと無理をした所から悲劇は始まっている。自分を犠牲にしているという思いがいつもアドルフにはあり、それが彼女に伝わり、彼の愛に飢えている彼女を苦しめる。それを彼女は彼に苦情として訴え、彼がさらにうんざりするという泥沼の構図。エレノールにしても、結局は自分を見失ってしまったことから悲劇は始まったのだ。

 なので、今恋愛をしている人、もしくはこれから恋愛をしようという人にとっては参考になるのではないか。というのも、やはりつい陥りがちな悪循環が描かれているからである。ある意味で辛口ではあるが、相当に説得力のある反面教師には違いないのだから。

 あまり気持ちの良い物語ではないが、アジャーニの迫力には相当のものがあり、映像美と相まってスクリーンで観る価値は大いにあると思う。実際、演技以上のものがあった。まるでこうした女性が本当に実在したかのような気にさせられたのである。その強烈な印象はアデルの時と同じように、しばらく残る気がする。
               以上

Posted: Tue - July 13, 2004 at 12:37 AM      


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