スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 ★★


果たしてあれで、ダースベーダーになったのか?  <疑問と考察>

主人公アナキン・スカイウォーカーがダークサイドに陥り、ダース・ベイダーになぜなってしまったかを描いているのだから、この映画ではその理由と動機付けが最も重要なはずである。

だが誠実なジュダイの騎士アナキンが暗黒側に陥るには、どうもその動機が弱すぎる気がしてならない。相当な理由づけが必要になるはずだし、そうでなければ嘘くさくなってしまうのである。
残念ながら、始めに設定ありきで作られたのか、後からアナキンのストーリーを捻り出したという感があるのがどうしても否めない。

前半では、彼がいかに魅力的かつ勇敢で忠誠心の厚いジェダイの騎士であるかを見せつける。そこで観客はすっかりアナキンに心を奪われるのだ。つまり見ている側としてはすっかりアナキン側についている。
ところが、最愛の妻が出産で亡くなるかもしれないという予知夢を見てから、
死者を甦らせることが出来るかもしれないというシスの誘惑にまんまと乗ってしまい、
ただそれだけの理由で、いきなり今まで信じてきたものを全て捨てて、子供や仲間を皆殺しにしたりという
極悪非道をするというのにはちょっと無理があるのではないだろうか。というより、あり得ない設定だと私は首をかしげてしまう。

人間というのは、信じてきたものを大切にする。それは余程のことがない限り簡単に変わることはない。
特にアナキンのような厳しい修行をこなしてきた人間は特に確固たる信念があり、それは死を持ってしても変わることがないレベルのものに達しているはずである。
だから、本当に信じられないほどの裏切りや真実の暴露、またはとんでもない誤解といったことでもない限り、彼が愛し続けてきた信念を変えることはあり得ないのである。

しかもシスがもっと魅力的に描かれていたならばまだ納得がいくが、そうでもない。なにしろアナキンを誘惑する存在なのに、彼はそれほど強くもないし、魅力的でもない。むしろジュダイ側の方が強くて魅力的に描かれている位である。

妻がアナキンの変貌にショックを受けて、生きる意志を失い出産で死んでしまうが、それを最も恐れていたはずのアナキンが、妻の死を避けるためだけに悪へと変貌した結果、妻の死を招いてしまうというのは、原因と結果が一巡し一体となった悲劇的効果を生んでいる。これは恐らくアナキンがまだ未熟なために、予知夢の判断を誤ってしまった結果ということになるのだろう。

アナキンは自分の弱さから悪の誘惑に負けて、いたいけな子供達まで皆殺しにするという極悪行為さえも行い、その結果として、妻の愛と命を失い、自分の肉体さえも失うという悲劇に見舞われる。
当然の結果であるが、果たしてそうした場合、普通、人間は絶望して死を選ぶか、もしくは自分の過ちに気づいて猛烈に改心するものではないだろうか。

ここでやはり首をかしげざるを得ないのは、妻の死を知ったアナキンがなぜまだダースベーダーとしてシスに仕えて生きていこうとする意欲があるのかという点だ。
設定では、妻の死=自分の死というように考えていたはずだが、いつの間にか別の物にすり替わってしまっている。別の物にすり替わるなら、シスにマインドコントロールされたとか何か理由が必要だが、この辺の説明も特になく心理描写も雑で、誤魔化されてしまっているのが残念である。

とまあ思ったことを色々と書いてきたが、ようやくエピソード最終章まで来て、ついにお話が一巡して繋がった、あぁ良かっためでたい、という感じで見れば、それはそれで楽しいとも言えるのだが。。




Posted: Wed - July 27, 2005 at 10:24 PM      


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