『真珠の耳飾りの少女』★★★★


ピーター・ウェーバー監督 スカーレット・ヨハンソン主演 4/20鑑賞

 関内MGAで観てきた。とても満たされた感じ。久しぶりに本当にいい映画を観た気がする。映像美といい、役者といい、物語といい、どれも気に入った。主演のヨハンソンは実に素晴らしい。美しい映画。もう一度観たいような、その余韻を楽しむ。

 フェルメールの絵のようなアトリエ、オランダの17世紀の暮らしぶりとその空気。決して豊かではないが体裁を繕おうとする画家一家の暮らしぶり。使用人として働く主人公の目を通した、まるで絵画のような世界。
幻想の中で暮らしているような生きた人達の動き。緊迫した空気。そして目が吸い付いて離れない主人公グリートの魅力。純粋さの中に不安と強さと鋭い感性が同居する。
フェルメールの人を不安にさせるような眼差し。別世界に生きている、どこか諦めたような人間である彼の孤独。
彼の唯一の理解者となるグリート。身分の差。超えられない壁。二人の強い聖なる結びつきが一家の不穏を加速していく。緊迫した空気。絵画のような日常的風景。

しっかりとした物語でありながら、絵画的であり、詩的でもあるそんな映画である。じっくり鑑賞して味わうのに耐えうる作品ではないだろうか。

名画は実に多くを語る。言葉をはるかに超えている。
言葉で語れるものは実際あまりにも少ない。

この映画を観て、そう実感した。
言葉よりも、その場の空気やニュアンス、表情が発するメッセージの方がどれほど豊かに多くを表現し得るかということに改めて感動する。

 日頃私たちは多くを言葉に頼っているが、それがいかに誤解を生みやすく、真実でないものを安易に創り出すか、ということを思い出してみるのもいいかもしれない。

 ちょうど先日観たシェイクスピアの芝居『オセロー』に出てくる饒舌な人物が、いかに巧みな言葉によって偽りの世界を創り出し、人々を破滅へと導いていくかを思い出すだけで十分である。言葉というのは注意しないと、私たちを予期せぬとんでもない方向へと導く力を持つのだから。
それに対して、その場の雰囲気や感情の発露である表情、仕草などは、深く静かであるが、実はこれらこそが最も真実を物語っているのではないだろうか。

そうした微妙で繊細なものを感じ取る力ー感性を磨いておくのは、人生を豊かにするに違いないだろう。
4/22/04

Posted: Thu - April 22, 2004 at 12:38 AM      


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