マリア・パヘス舞踊団  [写真あり!]


『ソングズ・ビフォア・ウォー』『フラメンコ・リパブリック』東京国際フォーラムC

 この週は水曜日にフラメンコ教室に通い、翌日は仕事が終わってから池袋までフラメンコ公演を見に行き、そして日曜日には、待ちに待ったマリアパヘスの公演を卒業生を連れて見に行くという、フラメンコ三昧の実に幸せこの上ない週であった。

 パヘスは二年前のオーチャードでの公演を観て以来だが、あの時彼女のソロを見て感動し、涙した。その後、スペイン国立舞踊団により、彼女の振り付けによる「イルシオネスFM」を観て、その何とも言えないノスタルジアを彷彿とさせる美しさが心の奥深くまで染み込んでいったのを体験している。
 そして今回の公演。先行予約をしただけあって、前から10列目の真ん中に近いという申し分ない席。フラメンコをこれほどいい席でまだ観たことはなかった。
 そして幕が上がるや、フラメンコの誘う世界へあっという間に引き込まれていく。。
 前半の新作は世界初演という作品。伝統的なフラメンコではなく、演劇の要素やコンテンポラリー的な要素も入った冒険的なもの。だが、決して違和感はない。あくまでもフラメンコなのである。

 マリアパヘスという人はとにかくもの凄い存在感を放つ。舞台に上がると彼女はまるで巨人のようにさえ見える。他の踊り手達がとても小さく見えてしまうのだ。(といっても、女性陣の踊り手レベルは相当に高い)だが、後で書くが実際ロビーで見たときは、それほど大きい訳でもなかったのだから、やはり舞台に立つと超人に変貌を遂げているということだ。
 彼女が出てくると、とにかく視線が彼女の大きな存在に釘付けになってしまうのである。
 以前観たときも、彼女の手の長さが目立ったが、他の踊り手よりも恐らく長いであろう彼女の手と腕は、まるで別の生き物のように、変幻自在に動き回り、宙を這うようにのたうって蠢いている。。なんだか恐ろしいような感じまでしてくる手であり、それで深いものを表現し尽くすのである。

 今回は恵まれた席だったので、彼女が音楽や場の空気から何かを感じ取って、それを存在の全てで表現しようとするその姿が、まるで何かを産み落とす時に伴う苦痛にもがいているかのようにも見えてくる。いや、というよりもむしろ、彼女が表現したいものを出し尽くす為に、彼女の体だけではまるで足りないかのように、マリアはそのもどかしさに苦しみ悶えているかのようであった。
 その姿は単なる舞踊を超えて、別の次元にまで到達しているように思われ、ただただ圧倒されてしまう。

 今回特に印象に残ったのは、(「リパブリック」は二度目であったが、初めて観たような気さえした)ジョンレノンの名曲「イマジン」である。彼女の平和を願うその切実な思いが、曲の旋律と溶け合って、世にも美しい胸の奥まで染み渡るような、美しい愛に溢れた作品になっており、感極まって涙した。
 これは、「イルシオネスFM」を観たときと同じような感動で、私は彼女のこうした作品に、どこにもないオリジナリティーと共に、忘れられないような懐かしさが込み上げてくる至高の愛を感じ取ったのかもしれない。まるで抱きしめたくなるような愛おしい作品。彼女のインタビューを読むに、彼女の平和への祈りが人類愛に溢れていて、ああ、こうした強い思いがあのような美しい作品を創造させたのかと思って、敬虔な気持ちにさえなるのだった。

 そんな素晴らしい体験をさせてくれたパヘス舞踊団だが、興奮冷めやらず会場を出てロビーに行くと、なんといきなりマリアパヘスその人が普通に歩いているではないか、、。もうびっくりしてしまった。そして、意外なことにそれほど大きくない。歓声を上げて騒いでいると、サインをもらえるというので、ダッシュして列に並んだ。なんという幸運なことだろう!妹や教え子に写真まで撮ってもらったので、ご披露することにする。 


(左) 感動の対面の瞬間 (右)自慢のパヘスのサイン
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パヘスの3連ショット

 当然のことながらこれで、私の幸福度はさらに高くなった。
そして、マリアパヘス本人と会ったのだが、舞台とはまるで別人のように、輝くような笑顔の可愛らしいと言った方が似合うような美しい人であった。

 実際、舞台を降りたままファンの所に駆けつけてくれたので、舞台の熱気とオーラに彼女自身が包まれているせいか、他の人にはない輝きを放っていて、眩しくて彼女の顔をまともに見ることさえ出来ないほどだった。
 人間が光を放つことが本当にあるのだとつくづく感心してしまいました。彼女はずっと素晴らしい笑顔を私たちに見せてくれてました。ああ、なんていい人なんでしょう。。

 舞台では、凄みすら感じる超人というイメージの彼女が、舞台を降りるとこんなに気さくで可愛らしい笑顔の人だなんて、、。これは思いもよらない発見であり、ますます素敵な人だと魅了された私でした。
 感謝の一日でした。
                        以上

6/9/04 記述

Posted: Sun - May 23, 2004 at 09:58 PM      


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