フランス国立リヨンオペラ座バレエ団 コンテンポラリーは凄い


『大フーガ』『ファンタジー』『グロスランド』

『ファンタジー』『グロスランド』が素晴らしかったので、この二つを取り上げたい。

『ファンタジー』
振付サシャ・ヴァルツ(独)
音楽 F. シューベルト『幻想曲』ヘ短調

薄暗い舞台の中に繰り広げられる非日常の世界。
陰鬱で暗い導入部からその独特の世界に引き寄せられていく。
鈍くてうつろな動きを観ていると、昔に観た中国映画が思い出される。

次第に動きは速くなり、ダンサー達が羽ばたき始める。
まるで鳥というより、トンボにでもなったように気持ちよさそうに飛んでいる。
自分も一緒に飛んでいるような気分になった。
この時、この人達は昆虫なのではないかとふと思った。
様々な想像の世界が膨らんでは交差する世界。

やがて元の鈍くて暗い世界に戻っていく。
ここで輪が完結し、繋がったのだ。
人の一生、はたまた虫の一生を彷彿とさせた物語が終わった。
この短い作品の中に一つの「生の姿」を垣間見た気がした。
凄いと思った。
上質のコンテンポラリー作品というのは、傑作の短編(文学)とどこか似ている。


『グロスランド』
振付マギー・マラン
音楽J.S.バッハ

この舞台は私にとって、忘れられないものとなるだろう。
なぜならこれほど楽しくて意外性のある舞台を今まで観たことがなかったのだから。

ダンサー全員がふとっちょの着ぐるみを着て躍るその姿は
愛らしさと可笑しさに溢れているのだが、それだけに留まらない何かがあった。
圧巻の一言。
その仕草や動作の一つ一つが非常に正確かつ緻密であり
振付家の観察力の鋭さに度肝を抜かれた。

あくまでも楽しませる内容で有りながら、この迫力は一体なんだろう。
途中から、裸体のふとっちょ着ぐるみを着たダンサー達が躍りまくるが
その姿を観て、ピカソやマチスの絵が動いているのを
目撃したような、不思議な気持になったのだ。
なんというのか、凄いものを観ているという気がした。
いつまでも観ていたかった。
ひょっとしてあるかもしれないが、ありえない世界の前に
私の想像力は大変刺激されたのであった。
マギー・マラン万歳!

他の作品も是非観たみたいものだ。


Posted: Tue - March 7, 2006 at 11:39 PM      


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