ベルリン国立バレエ団 『ラ・バヤデール』神奈川県民ホール


ディアナ・ヴィシニョーワ、ウラジーミル・マラーホフ主演

この公演は実を言うと、マラーホフ目当てではなく、
ディアナ・ヴィシニョーワ(マリインスキー・バレエ)が観てみたくてチケットを取った。
彼女の特集を確かシアターテレビで見たと思うのだが、
このような美しい人がこの世にいるのかと思い、是非一度見てみたいと思っていた。

だが取った席が三階席だったこともあり、仕事を抜けて平日の公演だったので
オペラグラスも忘れてしまい、彼女の容姿はあまり良く見えなかったのだが、
遠くからでも彼女の表現力の豊かさ、美しさは十分に伝わってきた。

さて公演のほうだが、非常に満足のいく内容だった。
舞台装置、衣装の豪華さに加えてゲストのディアナ氏は素晴らしいし、マラーホフが主演である。
彼は夫曰く、猫足で足音を立てないというのを
後から聞いたが、そう言われてみれば音がしなかった気がする。
ただそれほどマラーホフは目立たなかったので、私としては本当のところあまり印象に残っていない。
ディアナ氏が踊るニキヤが毒蛇に噛まれて死んでしまう場面が迫力があったのを覚えている。

公演の中で最も息を呑むほど美しかったのは、「影の王国」のシーン。
バレエの発表会などで何度か観ていたが、プロの公演で観るのは初めてだったので
大舞踊団による完成された静かな美しさに感動した。

コール・ド・バレエが一人ずつ、永遠に続くかのように静かに登場してくる。
濃紺の暗い色彩の中に、白が一つずつふわり、ふわりと現れて交差していく
その静謐な美しさには鳥肌が立つほど。
人工的というよりは自然界の創り出す美に近いような気がした。
神秘的な白い生物が息を潜めて蠢いているかのような異次元空間に酔う。

この場面はこれだけで完璧であり、なぜ発表会などでよく踊られるのかが
この公演を観てよく分かった。
この場面だけでも観る価値が十分にあったと思う。

この公演では第四幕で、神の怒りにより寺院は迫力のある大がかりな舞台装置によって崩壊し、
人々は瓦礫の下に埋もれ、あの世でニキヤとソロルが結ばれて幕を閉じるという筋になっている。

だが、以前シアターテレビで見た公演では、生まれ変わって別の時代で
二人が出会うという輪廻転生を匂わせるエンディングになっていたが
私はそちらの方が、時間の流れと生命のダイナミズムを感じて好きである。

7月24日記述










Posted: Tue - June 28, 2005 at 12:06 AM      


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