スタダン公演バレエ「ドラゴン・クエスト」


西島千博、福島昌美ほか  ゆうぽうと 

 バレエであのドラゴン・クエストをやるというので、どういうものになるのかと思ったが、とてもよく出来ていた。
 バレエ的な優美さと、演劇的な要素、そして古典バレエにはなかった現代ダンスの動きが加わり、さらにゲームの要素でもあるモンスターまで色々と出てくるという演出に思わず笑みが漏れた。
 私は一切ゲームをやっていないのだが、お話としてとてもよく出来ている。とくに第二幕は、お芝居を観ているかのようだ。白の勇者ー出生の秘密の場面や、黒の勇者が真実を知らされ葛藤の末、魔王を裏切って倒すというクライマックスには思わず息を呑んだ。
 魔王を倒したが、白の勇者と兄弟でもある黒の勇者も共に亡くなってしまったことで、舞台は複雑な悲しみに包まれる。芝居ならここで終わりそうだが、その後、舞台は華やかな宮廷に移り、みんなで王女と勇者が戻った喜びを分かち合い、バレエの醍醐味でもある華やかで美しい踊りが繰り広げられ、気分は高揚していき、幕が閉じる。

 それにしても、和製ファンタジーであるドラゴンクエストは大いにヨーロッパ的である。アーサー王伝説や『ロードオブザリング』を彷彿とさせる逸話や人物設定の中で、敢えて日本的だと思えるのは、やはりモンスターというキャラクターが入り交じってくるところだろうか。といってもゲームをやっていないので、このバレエを観ただけの感想ではあるが。。

 最後に、主役の一人である王女役を踊られた福島昌美さんは実は主人の元バレエの先生である。舞台の後、楽屋でチューリップの花束を渡しに行ったが、華やかな舞台を降りると、とても素朴で気さくなお人柄なのでそのギャップに驚いてしまう。そんな彼女の素直さに触れて、心まで爽やかになる思いがした。芯のしっかりとした、たおやかな花のような人である。

Posted: Sat - February 28, 2004 at 10:16 PM      


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