ダイヤモンドは宇宙の輝き  2/19/04


同人誌にも掲載して頂いたエッセイです

 朝刊の記事を読んで驚いた。宇宙空間に巨大なダイヤモンドの星が浮かんでいるというのである。といってもそのダイヤモンド自体は地球から50光年離れた白色矮星の内部にあるらしい。

 その星は終末期にさしかかっていて、その内部が超高圧状態のために、主成分である炭素が硬く結晶化してダイヤになっているというのである。その大きさはなんと、直径約四千キロもあり、重さは10の34乗カラットなのだという。想像を絶したダイヤモンドの大きさである。

 私たちの身近な太陽を例にとると、なんと我らが太陽も50億年後には燃え尽きてこれと同じ白色矮星になり、その後20億年すると同じように中心部に巨大なダイヤができるのだという。
 これを読んだ時、宇宙というスケールの大きさに改めて溜息が出た。と同時に、我が家にもある小さなダイヤが、一体どこから来たのだろうかと思いを馳せる。

 地球の大地深くに埋まっていたダイヤモンド。これが掘り出されて加工され、市場に出回って私たちの手にするところとなっている。だがその前は一体どこにあったのだろう。

 本当のところダイヤは遙か宇宙からの贈り物なのではないだろうか。しかも太陽と同じように惑星たちに光や熱を与え続けた恒星がその役目を終え、最後に宇宙の塵となって消える間際に創り出された結晶−それがダイヤモンドなのである。

 想像してみよう。星の寿命が尽きて最後の爆発で粉々となったダイヤを。その破片は宇宙の塵に混じって漂い始め、やがてそうした塵が集まって新しい星々が生み出されることになる。その時それら新星を構成する成分の一部に紛れて、ダイヤはひっそりと存在し続けていたのだ。そんな宇宙規模の壮大なドラマがこの小さなダイヤに記憶されているとは...。

  そう考えると、その永遠とも思えるような時間の流れを経てきた聖なるダイヤモンドに対して、畏怖の念と共に敬意を払いたいという素直な気持ちが自然と溢れ出てくるのだった。

 宇宙空間に燦然と輝き続けてきた太陽のような星が、その莫大なエネルギーを最期になって凝縮させたもの、しかも星々の世代交代という気の遠くなるような時間を遙か彼方から渡ってきたという歴史をも有するもの、それがなんと私の手の中に収まる小さなこのダイヤなのである。もしそうであるならば、永遠の輝きを放つというのは誠に故あることではないか。

 ダイヤモンドは昔から万物中の至宝にして宝石の冠たるものと言われている。その名称は万物最高の硬さのために、ギリシャ語で征服しがたいという意味の、a(否定辞) damazein(征服する)に由来する。

 その透明度から古くは毒を中和して精神錯乱を防ぐ力があるとされ、魔除けや護身用として身につけられていた。現在でもそのパワーは永遠の絆、清浄無垢を象徴するところから、純粋なまま永遠に変わらない絆を結ぶ物として婚約指輪に用いられているのは皆の知るところである。

 ある本によると、ダイヤモンドは宝石の中でも特別な石であり、その周囲は「強いエネルギー」に満たされているという。持ち主を不運や悪い力から守ってくれるが、ただし心に邪悪な気持ちが潜んでいると、それを見抜いて効力を失ってしまうとも言われている。

 私たちが古くからこのダイヤの力に魅せられ、珍重してきたのはやはり理にかなったことではないか。様々な本に書かれているダイヤの持つ不思議なパワーを吟味するに頷いてしまう私であった。

 ダイヤモンドの硬質で澄んだ輝きは真に力強く、しばらく見つめているとそれは私の魂までをも取り囲み、心の中を貫いてまるで全てを見通しているかのように思えた。

Posted: Thu - February 19, 2004 at 03:32 PM      


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